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林檎亭

(´・ω・`)やぁ。 ようこそ林檎亭へ。

第一話-刻を継ぐもの-【宇宙駆ける蒼い鳥】

2009.11.09

category : 月光蝶である!


<宇宙世紀 0087 3月>
【アナハイム・エレクトロニクス所有 ラビアンローズ重力ブロック】



「ガンダムMk=Ⅱが、強奪された?」

ティターンズ制服に身を包んだチハヤが、飲んでいたコーヒーを置いて言った。

社内カフェのような場所。アナハイム社員の客はおらず、中にはティターンズ制服を着た女性が数人だけ。

一瞬の沈黙の後、

「まさか。」

チハヤは再びコーヒーに手を付けた。

「ホントだって!自分はちゃんと聞いたぞ!」

長い黒髪を揺らし、力説するヒビキ・ガナハ。

天心万爛、と呼ぶべき瞳でチハヤを睨み、次の言葉を探すように手を振り回している。

その身を包むは、チハヤと同じティターンズの制服。

「聞いたって、どこで?」

チハヤは呆れ顔で、そんなヒビキを見る。

「シジョウ中佐の部屋。」

「中に呼ばれたの?」

「……の扉越しに。」

目を逸らし、頭を掻くヒビキ。

「聞き間違いよ。あのグリプスがそう簡単に……」

チハヤは聞く価値無しと言わんばかりに、冷めてしまったコーヒーを飲み干した。

「本当だって!赤い彗星も出たらしいんだぞー!」

その単語に、チハヤの手が一瞬止まる。

目を閉じ頭を振り、

「あ……赤いMSなんてどこにだってあるじゃない。気圧されて負けた奴らの言い訳よ。」

乾いた笑い声をあげる。

「チハヤちゃん、赤い彗星好きだもんね。」

傍で話を聞いていたユキホが、微笑んで言った。彼女の身を包んでいるのもまた、黒を基調としたティターンズ制服であった。

「ユ……ユキホ何を!?」

慌てて立ち上がり、顔を真っ赤にして抗議するチハヤ。

「へー、チハヤさん、結構ミーハーなの。」

癖っ毛の長い金髪を後ろで束ねたミキ・ホシイが、チハヤの向かいの席に座り言った。

「ミキも!納得しない!」

机を叩くチハヤ。マグカップが跳ね、中のコーヒーがこぼれる。

「チハヤ………」

「ヒビキ!何よその哀れみの目は!?」

「チハヤ……昔っから、自分の車真っ赤に塗って喜ぶ奴は田舎者って決まってるんだぞ。」

「だから私は………」

ああもう、と頭を抱え、チハヤが叫ぼうとした時。

「休憩中ですか?」

自動ドアが開き、一人の女性が入ってきた。

「あ……シジョウ中佐……」

握り締めていた拳を解き、チハヤは敬礼する。

「チハヤ・キサラギ、クゥエルの追加ブースターのテストは済んだのですか?」

「はい。加速、姿勢制御、申し分ない性能でした。」

「そう、それは結構。」

そして、にっこり微笑むタカネ・シジョウ中佐。その微笑みは気品に溢れ、連邦高官の令嬢という事を再認識させる。

「それより中佐!Mk=Ⅱが強奪されたって本当なんですか!?」

微笑むシジョウに、ヒビキが元気良く手を挙げた。

「……どこで聞いたのですか?」

微笑んだまま、シジョウはヒビキを見る。

「……え?いやー、あのー………」

ヒビキは助けを求めて周りを見るが、3人はやっぱり……と言わんばかりに無関係を装う。

「まぁ良いですわ、隠すことでもないですし。」

ため息をつきながらも、微笑みを崩さないシジョウ。

「グリプスにMS3機が侵入、民間人の少年と共に、ガンダムMk=Ⅱが2機、奪われたそうです。」

シジョウの言葉に、やっぱり本当だったじゃないか、ヒビキが胸を張る。

「3機中2機も……くっ……」

チハヤは俯き、唇を噛む。

「貴女たちに責任は無りません。ここで油を売っていたという訳ではないのですから。」

「しかし……」

「慣熟訓練も立派な任務です。エゥーゴの抵抗も激しくなるでしょうし、ここでの訓練を完璧にしておきなさい。」

なおも不満そうなチハヤに、シジョウは微笑みかけた。

「……了解しました。」

チハヤは敬礼、ミキとヒビキの腕をひっ掴んだ。

「ほえ?」

「は?」

そのまま、出口へと二人を引きずっていく。

「ちょ、ちょっとチハヤ!何するんだよー!」

「模擬戦!やるわよ!」

「チハヤさん頑張りすぎなの。そんなだから胸が」

「うるさいっ!」
「うっさい!」

「なんでヒビキも怒るのー!?」



<同日>
【グリプス宙域】


「アーガマ、ガンダムMk=Ⅱ3機の収容を完了しました!」

エゥーゴ第765中隊母艦、アイリッシュ級モンデンキント艦橋。成長し、呂律のいくらかはっきりした声で、ヤヨイが言った。

「それにしても、ティターンズから裏切りが出るなんてねぇ……」

その隣、コトリがため息混じりに言う。

[ただの極悪集団じゃないですか、あんなの!事実を知れば誰だって裏切りたくなりますよ!]

オペレーター用のパネルに、ノーマルスーツを着たマコト・キクチの姿が映る。

「あれ?マコトちゃん、リック・ディアスで待機じゃないの?」

その真後ろに映る格納庫の風景を見て、コトリは首を傾げた。

[コトリさん、いい加減に全天モニターに慣れてくださいよ……]

呆れたように首を振るマコト。

「ごめーん、この歳になると変化に対応できなく……ああ、自分で言ってて泣きたくなってきた……」

そう言ってコトリは俯き、目頭を押さえた。

[あ、いや、そういう意味で言ったんじゃなくてっ!]

慌てて首を振り手を振り、マコトは言う。

「良いのよ……私はどうせ※※歳のお局オペレーター……うふふふふふふふふふ」

[こ、コトリさん、気にすることないですよっ!]

もう一つモニターにウィンドウが開き、同じようにノーマルスーツを着たハルカ・アマミの顔が映る。

「ハルカちゃん……ありがとう……嗚呼、刻の涙が見える……!」

上を向いたコトリの目から、涙が珠となって無重力に舞う。

その時。

「敵艦よりモビルスーツ射出!ハイザック4機、ジムⅡ3機です!」

涙するコトリの隣、ヤヨイが叫んだ。

「やっぱり、来た……」

艦長席、アズサが厳しい顔で呟く。そして通信機を持ち、

「嚮導艦より各艦へ。Mk=Ⅱを擁するアーガマの現宙域からの離脱を最優先とし、MS部隊による迎撃を要請します。………ハルカちゃん、マコトちゃん、準備は良い?」

「はいっ!」
「任せて下さい!」

モニターの中、二人は大きく頷いた。

「ハルカ機、マコト機、発進シークエンスに入ります!」

ショックから立ち直ったコトリの指が、モニターの上で舞う。

両舷のカタパルトに、2機のリック・ディアスが現れる。

片方は制式色の濃紺ではなく、純白とピンクのツートン。標準装備のビーム・ピストルは2丁とも肩に、手には大型の試作ビーム・ライフルが。

「リック・ディアス、ハルカ・アマミ行きます!」

軽快な音と共に信号が移り変わり、カタパルトがハルカ機を押し出した。

そしてもう一方の舷には、濃紺を通り越した漆黒に、白のラインのリック・ディアス。その背部バックパックはピストルは装備されておらず、代わりに追加ブースターが。

携行武器は持っておらず、右腕にはスパイクシールドを、左腕にはシールドとそれに内蔵されたビーム砲。

[マコト・キクチ、行っきまーす!]

威勢の良い掛け声と共に発進、全力噴射でハルカに追い付いた。

「マコト!」

「分かってる!正面にハイザックが1、2……3機!援護よろしく!」

言うや否や、頭部のバルカンとシールド内蔵のビーム砲をバラ撒きながら敵に突進していく。

「当たってっ!」

ハルカは最前線のハイザックに発砲、吹っ飛ぶハイザックの肩部シールド。

「この距離で当ててくるのか!」

損傷した右肩を庇い、ハイザックが発砲するが、有効射程を遥かに越えた距離で当たるはずもない。

「そっちばっかり見てると!」

その時、ハイザックのコックピットに鳴り響く接近警報。

「下から!?」

全天モニターに映るは、真下から猛然と迫るリック・ディアス。その右腕には、白熱したスパイクシールドが。

「でりゃああああ!」

出張ったハイザックの胸部にあるジェネレーターを撃ち抜く、強烈なアッパーカット。

きりもみしながら吹っ飛び、遥か彼方でハイザックは爆発した。

「次っ!」

「よくも!」

構え直したマコトに、隣にいたハイザックが仇と言わんばかりにサーベルで切り掛かる。

「なんの!」

軽々と光の刃を真下へかわし、股関節にビームを叩き込んだ。

砲身の短さから収束率こそ低いが、大口径大出力のビームがハイザックを貫く。

「あっという間に2機……!?化け物かよ!?」

最後に残ったハイザックが慌てて逃げ出そうとするが、時すでに遅し。

ハルカの放ったビームが、ハイザックを貫いた。

「先行のハイザック隊が全滅!?いったい何者だい!」

愛機ガリバルディβのコックピットで、ライラ・ミラ・ライラは言った。

「ガリバルディ隊、遅れるなよ!地球至上主義のティターンズと言えど、宇宙で事を決するのはこのライラ・ミラ・ライラ、スペースノイドの宇宙軍さ!」

[[了解!]]

後続の2機が展開、ライラを先頭にハルカとマコトに襲いかかる。

「何機来たって一緒だ!」

マコトが再び右腕を振りかぶり、突進する。

だが、ライラのガリバルディはそれを難なくかわした。

「嘘!?」

「動きが直線的すぎるんだよ!」

体勢を崩したマコトに、ライフルを突き付けるライラ。

「させない!」
瞬間、ガリバルディをハルカのビームがかすめた。

舌打ちとともにライラは跳ね退き、その間にマコトは体勢を立て直す。

「邪魔を!」

ろくに狙いを定めもせず牽制にとライラはハルカに発砲するが、ハルカは避けようともせず撃ち返した。

「こいつ、わざと外したのに気づいていた……?」

コックピット直撃コースのビームをかわし、ライラは呟く。

「いや、まさか、な。」

激しいビームの応酬。両者一歩も引かず、残弾だけが減っていく。

「くっ……隊の連中は……」

頭部を掠めるビームに歯ぎしりしながら、後ろを振り返るライラ。

「ボクが倒しましたよ。」

その眼に映ったのは、白熱するスパイクシールド。

「な……!」

慌てて回避、だが、姿勢を崩したところにハルカのビームをシールドでもろに受ける羽目になった。

「ぐっ……まさか……連邦宇宙軍の精鋭が!」

反撃もままならず、全力で後退するライラ。

「いや待て、あの機体色……荒野の死神と妖精……か?」

一年戦争末期の、アフリカ大陸における伝説のエース集団。

砂塵に浮かぶその紅と黒のコントラストは、見るジオン兵を恐怖させたとかなんとか。

「考えすぎ、か。」

その時、ティターンズ側の艦隊から発光信号が上がった。

他の部隊と交戦していたハイザックやジムⅡが、きびすを返し退いていく。

[敵部隊、後退していきます!]

[敵艦のノズル光確認。いったん、グリプスに戻るみたいですね。]

最大望遠のモニター画像を見て、コトリが言った。

[ハルカちゃん、マコトちゃん、お疲れ様。戻って。]

[[了解!]]




モンデンキント格納庫。

戦いを終えた2機のリック・ディアスと、数機のネモが整備用のアンカーに固定されている。

「ハルカ!お疲れ!」

ハルカ機の正面に止まる、黒いリック・ディアスのコックピットハッチを蹴り、マコトがハルカのところへ飛んでくる。

「お疲れ、マコト!」

格納庫の与圧を確認して、ヘルメットとノーマルスーツの手袋を外し、高々と上げるハルカ。

マコトも手を出し、ハルカの手を打った。

「凄いなぁハルカは。そのビームライフル、使うのは初めてなんでしょ?」

「そんなことないよ、偶然、偶然。」

マコトの称賛に、ハルカは全力で首を振る。

「その偶然で奇跡を起こすのがすごいんやないか。ニュータイプ。」

作業服に身を包んだ、ショートヘアの女性がハルカに微笑みかけた。

「チカコさん。」

「どや、試作ライフルの性能は。」

整備班御用達の電子メモを取り出し、チカコが言う。

「はいっ!レスポンスも精度も最高です!こんな良いのを回してもらえるなんて……」

「いや、これはあくまでも試作品や。使えるのが分かったら、アーガマのクワトロ・バジーナ大尉の新乗機の装備になるんやて。」

電子メモを閉じ、苦笑する 。

「なんだ、また実験台かぁ……」

ふわふわと漂うビームライフルを見上げ、ハルカが口を尖らせる。

その時。

「マ、コ、トーッ!」

向かい側、マコト機の固定された壁から響いてくる怒声。

「まずい、リツコだ!」

慌ててハルカの影に隠れようとするマコトだったが、時既に遅し。

無重力ドロップキックが、マコトの脇腹に直撃した。

「アンタ、またバルカン焼き付かせて!」

般若の形相のリツコ・アキヅキが、空中に仁王立ちして怒鳴る。

「ごめん、イマイチ加減が分からなくてさぁ………」

「加減!? 弾切れまで撃ち続けといて加減!?」

弱々しく頭を掻くマコトに、リツコは更に迫る。

「無茶な機動でフレームストレスがエラいことになってるのは……まぁ大目に見るとして、無駄弾が多すぎる!弾だってタダじゃないのよ!」

「今度から気をつけるよ……」

弱々しく笑い、格納庫の出口に向かうマコトだったが、

「あんたそのセリフは何度目だと……」

リツコに首根っこを掴まれる。

「まぁまぁ、良いじゃない。」

間延びした声に、腰の道具入れからナットを取り出そうとしていたリツコの手が止まった。

「アズサさん!」

ハルカが大きく手を振って、跳び上がる。

「あ、阿呆。」

チカコが止めようとするも時すでに遅し。

「ふわあああああああ!」

無重力の格納庫、高い天井まで飛んでいく。

「あらあら、どうしましょう……」

「ハルカ、大丈夫ー?」

「大丈夫、大丈夫!」

心配そうに見上げるマコトとアズサであったが、ハルカはなんなく天井を蹴って帰還。

「で、艦長、わざわざ格納庫まで来はった御用は何ですか?」

「アーガマから、モンデンキントへ指令があって……」

「で、わざわざアズサさんが伝えに来てくれたんですか?」

艦内放送で良いのに、とリツコが言う。

「それが、」

アズサはポケットから電子メモを取り出すと、

「『アーガマはこの後ルナツーでスイング・バイして衛星軌道に向かい、別ルートの艦隊と合流、ジャブロー強襲を敢行する。貴艦はアーガマに先行されたし。』って……」

申し訳なさそうにそれを読み上げた。

「「ええーっ!?」」

格納庫に、ハルカとマコトの叫びがこだまする。

「アンマンに寄るんじゃなかったんですかぁ!?」

「せっかくイオリちゃんに会って、服も買って、美味しいもの食べようと思ってたのに!」

「ごめんなさいね、アンマンに寄るっていうのは偽情報を流すためだったみたいで……」

矢継ぎ早に文句を並べるハルカとマコトに、アズサはうなだれる。

「もう、わがまま言わないの!」

その2人の頭を、リツコは小突いた。

「そうなればやる事は一つ!」

頭を押さえる2人を尻目に壁際に跳び寄り、通信機を手にとる。

[セリカとナズナはチカコと一緒にハルカ機、ゴジョウ、ハコベ、ホトケは私とマコト機、スズナとスズシロは艦の状態チェック!いいわね!]

「「「ういっす!」」」

格納庫の中を飛び回る少女達が一時停止、威勢の良い返事と共に、再び今まで以上のスピードで動き出した。

「本当にごめんなさいね……」

それを見ていたアズサが、改めて申し訳なさそうに言う。

「仕方ないですよ、アズサさんのせいじゃありませんって。」

だがハルカは満面の笑み、マコトも隣でうんうんと頷く。

「そう……?じゃ、申し訳ないついでに、戦闘宙域を出るまで哨戒……」

「じゃ、ボク達はシャワー浴びてきます!」

格納庫の奥に眠るネモを指差すアズサに危機を感じ、マコトはハルカの腕を掴んで駆け出した。

「あら………」

動きの鈍いアズサは、ただ取り残されて。







<同刻>
【ラビアンローズ宙域】


「オーバーマスター、バースより切り離し完了!」

アレキサンドリア級巡洋艦『オーバーマスター』艦橋。ユキホが、モニターの上で指を躍らせて言った。

「進路クリアー、ラビアンローズより発進許可出ました。」

ユキホの言葉と同時に、誘導灯が点灯する。

「ラビアンローズ、補給と整備、感謝します。」

通信機を手に取り言うタカネ。

その身を包んでいるのは、ティターンズの制服ではなく、毛皮、絹と豪華な私服に、手には羽の扇。

「進路、ルナツーへ。オーバーマスター、最大戦速!」

シジョウが扇を閉じ、鋭く前へ突き出した。

ふわりと裾の長い服が、美しい銀色の髪が、無重力に浮く。

尾部推進ノズルが火を噴き、オーバーマスターはゆっくりとラビアンローズを離れた。

「ルナツー、か……」

自室で、チハヤが口を開く。

「あのとき以来ね、ハルカに会ってないのは。」
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プロフィール

リンゴ・t

Author:リンゴ・t
アイマスが好きです、でもガンダムは人生です。

im@s架空戦記「宇宙駆ける蒼い鳥」好評連載中!

その他にも雑記、オリジナル小説上げるかも。

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