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林檎亭

(´・ω・`)やぁ。 ようこそ林檎亭へ。

第三話-高度五万米-【Blue Arcadia】

2010.04.16

category : Blue Arcadia 本編

「オーバーマスター、発進。」

艦長席に座り、シジョウが手を前に振りかざした。

[オーバーマスター発進!これより、地球衛星軌道へと向かいます!]

ユキホがパネルを操作、オーバーマスターの巨大なシルエットがルナツーを離れていく。

「中佐、本当に我々はこれで良いんですか?」

チハヤが艦長席に手をかけ言った。

「と、言うと?」

「今回の任務です!敵のジャブロー奇襲を見過ごし、3時間後にパナマ地侠に降下しろだなんて………」

「地球連邦の本丸たるジャブローが、エゥーゴの攻撃程度で陥落するわけが無いということでしょう。」

「しかし……」

「これは、そのジャブローからの命令なのです。」

「くっ………」

不満げにシジョウを見るチハヤだったが、

「分かりました、自室で待機しています。」

踵を返し、艦橋を後にした。

「チハヤちゃん………」

心配そうに艦橋の扉を見るユキホに、

「心配なら、行ってきてはどうですか?」

微笑みかけるシジョウ。

「え?あの………」

「索敵は他のオペレーターに任せて構いません。あなたはMSの管制担当なのですし。」

「…分かりました、ありがとうございますっ!」

ユキホは立ち上がって敬礼、艦橋を後にした。




「そう……チハヤちゃんが……」

モンデンキント艦橋。ハルカから話を聞いたアズサが、目を伏せて頷いた。

「星の屑以来、ずっと地球にいたなら仕方ない事なのかもしれませんね………」

オペレーター席に座ったまま、ハルカを見てコトリが言った。

「チハヤさん、私達の敵になっちゃったんですか?」

その隣で、泣きそうな顔をするヤヨイ。

その目に、チハヤに一番懐いていたヤヨイにまさかその通りと言うことはできず、一同はうつむく。

「……違うよ。」

口を開いたのは、ハルカだった。

顔を上げ、光の燈った目で前を見る。

「チハヤちゃんは、敵じゃない。」

「ハルカ………」

マコトが心配そうに肩に手をかけるが、

「チハヤちゃんを連れ戻そう!本当のティターンズを知れば、チハヤちゃんはきっと分かってくれるよ!」

ハルカのはっきりとした声に目を見開き、大きくうなずいた。

MSパイロットとして、親友として一番チハヤの近くにいた自分たちが、チハヤを信じずにどうするというのか。

「……そうだよ!チハヤは本当のティターンズとエゥーゴを知ったらきっと分かってくれる!」

力強くハルカの肩に手を置き、マコトは言った。

「そうね。チハヤちゃんはずっと一緒にいた仲間だもの。」

コトリもヤヨイの両肩に手を置く。

「ジャブロー奇襲の情報を受けて、ティターンズ艦隊も、衛星軌道上に集結する軌道をとっているらしいわ。もしかしたら、チハヤちゃんとも……」

アズサが艦橋の窓にうつる地球を見る。

その時。

「アズサさん、アーガマのブライト艦長からレーザー回線通信です。」

コトリがパネルを操作、アズサの手元のディスプレイに通信の詳細を表示する。

「お繋ぎ、してください。」

制服の襟を正し、艦長席に座るアズサ。

「分かりました。」

コトリの声とともに、ディスプレイに映し出されるブライト・ノアとアーガマの艦橋。

[アズサ・ミウラ中佐ですね?アーガマのブライト・ノアです。]

連邦軍制式の敬礼をするブライトに、

「はじめまして、アズサ・ミウラと申しますー。」

アズサは艦橋席から立ち上がりお辞儀をする。

[貴女のアフリカ戦線における活躍はお聞きしています。今回の作戦、よろしくお願いします。]

「いいえ、こちらこそ、ホワイトベースの英雄とご一緒できるなんて光栄ですわ。」

[私は二隻も自分の船を沈めた男ですよ。地球で貴女のヘビィ・フォーク級……『ネーブラ』と言いましたか、拝見したことがありますが、傷だらけになりながらもよく生き残らせていた。御立派です。]

「ただの偶然ですよー。」

かしこまって言うブライトに、アズサは手をひらひらと振る。

[ご謙遜を。……では、これよりアーガマ以下、エゥーゴ主力艦隊は連邦軍艦隊が軌道変更不可能点通過を確認後、長楕円軌道から双曲線軌道に加速、バリュート装備のMS部隊によるジャブローへのダイレクト・エントリーを行います。]

「了解してますわ、ブライト大佐。我々はその援護任務の後再加速、パナマ地峡へ降下すれば良いんでしょう?」

[この作戦は単なる武力威示です。カラバと共に、疲弊した部隊の援護をお願いします。]

「分かりました、お任せください。」

[では。]

敬礼と共に、通信が切れる。

「嚮導艦より各艦へ通達入りました。作戦開始予定時刻まであと一時間、各艦は第二戦闘配備で待機されたし!」

コトリの声とともに、艦橋のメインモニターに映し出されるカウントダウン表示。

アズサが艦長席に着き、口を開いた。

「総員、第二戦闘配備。MSパイロットはハンガーにて待機、全戦闘員は持ち場についてください。」

[総員、第二戦闘配備!MSパイロットはハンガーにて待機、全戦闘員はコンディション・イエローで各々の持ち場についてください!]

アズサの指令をヤヨイが復唱する。

「本艦はアーガマ以下主力艦隊のMS部隊のジャブロー降下を支援後、再加速してMS部隊をパナマ地峡に降下させます。落下限界ギリギリの戦闘になります、MSにはバリュートを装備してください。」

そしてアズサは手元の通信機をとり、MSハンガーに繋げた。

「リツコさん。」

[大丈夫です、マコトのリック・ディアスの調整も終わりました!ハルカ機へのバリュート装備作業も現在進行中。失ってしまったネモとパイロットの補充がきかないのが、少しイタいですけど。]

「仕方ないわ、補給を受けた直後だもの。」

苦笑するリツコに、微笑むアズサ。

[でもでも、アミたちがマコちんの機体にも調整入れておいたから、もっと強くなってるはずだよ!]

その時、格納庫の別の通信機からアミが割り込んでくる。

[そうそう!マコちんの良く使う格闘動作に合わせてフレームの剛性と重量配分を変えて、OSも組み替えておいたから、通常の三倍、速く動けるよ!]

[それは言いすぎじゃない?]

[かなぁ?]

[コラーっ!アミ、マミ、素頭で格納庫に入ってきたら危ないって何度言うたら分かるんや!はよ出ていくかヘルメット被るかせぇ!]

いつもの調子でまくし立てるアミとマミの声を遮るように、遠くから聞こえてくるチカコの声。

[マズい、チカゴンだ!]

[逃げろ!]

[誰がチカゴンや!外に放り出すで!]

「………そっちは任せて大丈夫そうね。」

[おもりは任せてください。]





「うわぁ、やっぱり地球は綺麗だなぁ……」

オーバーマスターのリラクゼーションルーム。外の景色を見て、ヒビキが言った。

「母なる地球だもの。それを守るために、私達は戦ってる。」

部屋の中央、チハヤは目を閉じ、無重力に浮いている。

「そうだな。スペースノイドの連中に、汚されてたまるもんか。」

「あ、あれがジャブローなの!」

真剣な顔をするヒビキと、無邪気に窓の外を指さすミキ。

その指の先には、ジオンの脅威が去って隠蔽する必要がなくなり、アマゾンの森林にぽっかりと灰色の穴が空いたようなジャブローの姿が。

「南米ジャブロー、地球防衛の要。だから私達は、そこを守らなければならない。」

「でも、あれじゃ地球が可愛そうなの。」

ミキが、窓越しにジャブローの穴をなぞるようにガラスを指で撫でる。

「コロニー落としなんていうことをするスペースノイドに乗っ取られるよりはマシよ。私達が地球に住むためには、仕方のないこと。………ジオンないたあなたなら分かるでしょ、ユキホ。」

「え、う、うん………」

部屋の隅にいたユキホは突然声をかけられ、驚いて顔を挙げた。

「ハルカにも、それを分からせないと………」

歯を食い縛るチハヤ。

それを不思議そうな顔で見るミキ。

その時、衛星軌道上に閃光が走る。

「まさか、もう戦闘が始まったの!?」

チハヤが窓に張り付き叫んだ。

[各員へ、エゥーゴ艦隊が我々の予測を裏切り双曲線軌道へ加速を開始しました。]

艦内に響くシジョウの声。

「やられた……!現行の連邦軍艦隊では、この高度からじゃ重力に引かれて逆行出来ない!」

[いち早くそれに気付いた遊軍が現在攻撃を行っていますが、敵部隊の大半はジャブローに降下してしまいます。ジャブローが落ちることはありえませんが、残党狩りの厳しさは増すやもしれません。MS部隊は心して下さい。]

そして、通信機を置くシジョウ。

「敵も愚かでは無い、ということですか…………オーバーマスター、最大戦速!降下予定時間が早まったことを忘れないで下さい!」



「作戦開始時刻まで、あと5、4、3、2、1」

モンデンキント艦橋の時計と共に、ヤヨイがカウントする。

00:00

「作戦開始、全エゥーゴ艦隊は双曲線軌道へ加速開始!本艦は長蛇円軌道へ復帰可能なコースからMS隊の降下を援護しますっ!」

「機関最大、MS部隊、発進準備!」

「機関最大、出力臨界まで上昇。軌道変更、キュウイチナナニイ!」

メインモニターに地球の模式3Dグラフィックと、超蛇円、双曲線、艦の現行軌道が表示される。

[MS部隊、発進準備。ハルカさん、マコトさん、準備は良いですか?]

ヤヨイの指がパネルの上で舞い、ハルカとマコトを画面に呼び出す。

「あたしはいつでも大丈夫!」

リック・ディアスのコックピット、ハルカが親指を上げた。

「こっちも大丈夫だよ!さっすがリツコの整備!」

マコトも、いつものガッツポーズ。

「一応、連邦軍艦隊が突入を邪魔できないような突入路を取ってるはずなので、出番が無い方が良いんですが……」

うつむき、ヤヨイは言う。

するとマコトは笑って、

「連邦のことだし、案外楽に騙されて……」

[軌道面南より追尾する艦、二隻!ティターンズのボスニアとアレキサンドリアです!]

「マジ!?」

コトリの報告に、あわてて操縦幹を握りなおすマコト。

[MSと思しき光を確認、確認出来るだけでも十機以上は!]

[ハルカちゃん、マコトちゃん、出撃、良い?]

「はい!」
「もちろんです!ヤヨイ!」

「了解です!ハルカ機、マコト機、射出準備!」

MSハンガーからエレベーターに乗って、バリュートを装備したハルカとマコトのリック・ディアスがカタパルトに現れる。

[突入限界点はもちろん、第二波に備えての補給も考えると、かなりギリギリでの戦いになるわ。二人とも、回収時間と高度に気をつけて。]

「わかってます!」

「進路クリアー、発進どうぞ!」

「ハルカ機、行きます!」
「マコト機、発進!」

火花を散らし、カタパルトが二機を押し出す。

[敵は味方のMS突入部隊の後ろを取っています!突入部隊は陣形を崩すことができないので、援護してあげてください!]

「分かった、ありがとうヤヨイ!」

[……っ、最後尾のシチリアが食われました!]

「展開が早い!急いで、ディアス!」

スラスター全開、降下部隊に追いつくハルカ。

「こちら765部隊、ハルカ・アマミ!突入を援護します!」

追撃部隊を食いとどめようと闘う濃紺のリック・ディアスに、ハルカが言う。

「こちらアーガマのエマ・シーン。援護感謝します。」

リック・ディアスはこちらを一瞥、中の女性が言った。

「はい!」

エマに並び、背中のビームピストルを二丁拳銃にして弾幕を張るハルカ。

「エマ……さんでしたっけ、突入部隊なんでしょう?ここは私が支えます!」

「そんな、あなただけには……」

「でりゃああああああああああああっ!」

その時、敵部隊の一機がマコト機に殴り飛ばされる。

「味方も居ます、大丈夫です!」

マコトに気をとられた敵機に、ハルカが二丁拳銃を撃つ。

光の束は二発とも命中、慌てて回避運動に入ろうとした敵を、再びマコトの拳が撃ち抜いた。

「凄い………!」

その連携に、呆気にとられるエマ。

「エマさん、ここは大丈夫です、だから!」

「分かったわ!」

そう言って、エマが後退しようとした時。

「ティターンズの暴虐を抑えるために、ジャブローを叩く。………分からんでもない、が!」

彼方からビームが飛んできて、エマ機の肩を貫いた。

「きゃああああああっ!」

「エマさん?!」

慌てて火線に目を向けると、凄まじい速さで接近する機体が。

「ティターンズには、まだ使い道があるのでね!」

「モビルアーマー?!」

鋭く尖った先端に、ラッパのようなブースターを2機積んだ機体。

ハルカが発砲するが、その機体は竜巻のような機動で全て回避する。

「ダメ、早すぎる!」

「だったら近づいて!」

マコトがブースター全開で接近、拳を振りかぶった。

「ナメるな、小僧!」

「ボクは女だーッ!」

怒り心頭のマコトが、まさに拳を叩き込もうという瞬間。

モビルアーマーが、モビルスーツに変型した。

「こいつ、変型した?!」

後部の4つのブースターのうち、2つが足になり、2つが肩のビーム砲に、先頭部分が胸部装甲に。

そして、その巨大な足がマコト機を蹴り飛ばす。

「マコト!」

「ぐぅぅっ……ボクは大丈夫!今のうちに……」

「…分かった!」

腰から試作ライフルを取り出し、回し蹴りを決めた機体に狙いを定めるハルカ。

その時、ハルカの体を走り抜ける違和感。

水の中に入って全身が圧迫されるような、心臓が握られているような。

「この程度の……プレッシャー!」

圧迫感を払いのけ、ハルカは引き金を引いた。

「……言葉が走った!?」

その膨大な推力を以て回避しようとしたコックピットの男の手が、止まる。

放たれた光の束が、肩のビーム砲を貫いた。

「ええい!この私がプレッシャーに押されるとは!」

反撃しようとするが、ビーム砲の損傷が激しくかなわない。

「これで、決める!」

ハルカが再び狙いを定めるが、

「くっ……重力の井戸に引かれるのはゴメンだ!」

敵機は反転、彼方へ消えた。

「行って………くれた?」

軌道に残る光の筋を追いながら、ハルカは言った。

「なんだったんだろう……」

マコトも、自機の損害を確認しながら言う。

「ありがとう、助かったわ。」

ボロボロになったエマ機が、ハルカ機の肩を掴んで言った。

「でも、その状態じゃあ。」

「地球に降りれなかったのは残念だけど、それは私の力不足。構わないわ。」

「はい………」

うつむくハルカ。

[ハルカさん、マコトさん、突入部隊全機が大気圏突入軌道に乗りました!こちらの大気圏突入作戦まであと一時間、いったん戻ってください!]

モンデンキント、ヤヨイからの通信。

「MS隊の被害状況は?」

「想定の範囲内、作戦に支障ありません!ハルカさんのおかげですっ!」

「分かった、今から帰還します!」





「敵MS部隊の突入を許してしまったというのですか!?」

オーバーマスター艦橋、ノーマルスーツに身を包んだチハヤがシジョウに食って掛かる。

「残念ながら。敵の被害は1割にもみたないと。」

艦長席に座ったまま、シジョウは言った。

「だから私達を作戦から外すなんて……!」

「見苦しい。おやめなさい、チハヤ・キサラギ。」

「しかし!」

「貴方達の戦力は、これから激化していくエゥーゴとの対決に欠かせないものです。それを、事故のような死因が多い大気圏突入作戦で使うわけにはいきません。」

「くっ……」

「分かったなら、持ち場につきなさい。もう発進でしょう。」

「………分かりました。」

しかし、それにしても……

チハヤが去り、艦橋のドアが閉まるのを見て、シジョウは思う。

グリプスへの本拠移転を進めている今、あまり攻撃を受けるのは得策ではないはず。我々を除け者にしてまでジャブロー防衛の人員を減らすとは………やはり、不自然。

………悩んでいても仕方ありませんね。

自嘲気味に笑い、顔を上げた。

「大気圏突入作戦、開始!」

[軌道変更開始!クゥエルへのバリュート装備及び大気圏突入艇準備完了!]

[MS部隊、大気圏突入まで15分!発進準備!]

オーバーマスターのオペレーターの声と共に、カタパルトに出現する3機のクゥエル。

眼下には青い地球、クゥエルの背中には不恰好なバリュートが、ブースターを避けるように少しずらして装備されている。

[今のところ周辺に敵影はありませんが、油断はしないで下さい。万一会敵しても交戦はなるべく避け、大気圏降下を最優先に。]

「了解です、シジョウ中佐。」

クゥエルのコックピットパネルを操作しながら、チハヤは言った。

「バリュートシステムオールグリーン、これより大気圏突入ミッションを開始します。………ミキ、ヒビキ、準備は良い?」

「もちろんなの!」

「大丈夫だぞ!」

二人の元気な返事にチハヤは頷き、

「クゥエル、チハヤ・キサラギ。」
「ミキ・ホシイ!」
「ガナハ・ヒビキ!」

「フェアリー隊、発進!」

「「「いきます!」」」

カタパルトが火花を散らし、クゥエルを押し出す。

[続いて、ミント級大気圏突入艇『コスモス・コスモス』、発進準備!ユキホ少尉、準備はよろしいですか?]

カタパルトに出現する、平たいシルエットの舟。

旧ジオン軍のコムサイよりも一回り小さく、かといってミルク級の一人乗り用という訳でもない。

大気圏突入用のド・ダイといったところか。

「大丈夫ですっ!先行のチハ………もといフェアリー隊捕捉、軌道追従設定完了!」

その中、クルー用のノーマルスーツを着たユキホが言った。

[ユキホ、地上での彼女たちのサポートをお願いします。]

「了解です、中佐!」

[進路オールグリーン、コスモス、発進させます!]

膨大な推力で、大気圏突入艇コスモスが発進する。

「大気圏突入軌道上に、敵影なし。」

「とりあえずは、何事も……」

小さくため息をつき、席に座りなおすシジョウ。

「もとい!」

警報音と共に、オペレーターが叫んだ。

「正面よりこちらに接近する艦影!今まで熱を潜めていたようです!」

「急いで解析を!」

「……解析完了、ルナツーで交戦した艦と思われます!」

[それ、本当!?]

オペレーターの報告に、チハヤが割って入る。

「はい、熱紋から見て間違いないかと……」

「MSらしき光を確認、数3!」

[チハヤさん、またアイツが来るの!]

光を見て、ミキが叫んだ。

「ハルカ……!」




「ハルカ、リック・ディアス、行きます!」
「マコト、リック・ディアス、行きます!」
「こちらネモ、タナベ機発進します!」

ラーディッシュ級、両弦のカタパルトからMSが発進する。

[チハヤさんの乗っている戦艦からも、MSと思しき光を確認しました!たぶん、チハヤさんも……]

直後、ヤヨイからの通信。

「チハヤちゃん……!」

ハルカが歯を食いしばり、ペダルを奥深く踏み込んだ。

[ハルカ、飛ばしすぎ!]

全力噴射するハルカを慌てて追いかけ、マコトがその肩を掴んだ。

「でも、」

「チハヤだってきっとこっちに気付いてる、ちゃんと会えるよ!それより、大気圏突入に気を付けなきゃこっちが死んじゃうよ。」

「………分かった。」

うつむき、ハルカは突入軌道を再確認。

バリュート展開高度到達10分前に会敵、

…………その間に、説得しないと。

[ハルカちゃん、焦るのは良くないぞ!]

「タナベさん。」

随伴していたネモも、ハルカ機の肩を掴んで言った。

「分かりました。……チハヤちゃんも、きっと分かってくれる……よね。」

[もちろんだよ!チハヤは仲間だもん!]




[計算結果出ました!バリュート展開高度到達10分前……あと少しで会敵します!]

ユキホが、コスモスのパネルを操作しながら言った。

「ありがとう、ユキホ!」

チハヤも、クゥエルのブリーフィングモニターで軌道を確認する。

[チハヤさん、あれって誰なの?]

昨夜のヒビキとのやり取りを知らないミキが、チハヤ機の肩を掴んで言った。

「私の古い親友よ。星の屑以来、会っていないけど。」

[お友達なの?じゃあなんでエゥーゴに……]

「私にも分からない。ハルカだって、コロニー落としで親族を亡くしているのに。」

思いつめたようなチハヤの声。

[チハヤちゃん、機影を確認、そっちに送ります!]

その時、ユキホから通信が入る。

コスモスの高性能カメラが捉えた敵部隊。黒とピンクのリック・ディアスと、一機のネモ。

「あの黒いのは……もしかして、マコト?」

チハヤは全身のスラスターをチェック、

「フェアリー隊、アローフォーメーション!ピンク色のリック・ディアスを鹵獲するわよ!ユキホは後方から支援!」

[了解!]
[了解なの!]
[分かった!]



「来る!」

軌道上の光を見て、ハルカがビームライフルを構える。

[え、でもまだ……]

スラスターの光が見えただけで、まだ光学センサーでは捉えられていない。戦闘開始はまだだろうと思っていたタナベ。

だがその瞬間、3機の間を光が駆け抜けていく。

「ミキ!?」

[チハヤさんを、困らせたらダメなの!]

慌てて振り向いたチハヤの目に入ったのは、遥か彼方に向かってビームライフルを構えるミキ。

「待ちなさい、ミキ!」

[あのピンクのリック・ディアスを捕獲するんでしょ?なら他のは!]

そう言って、さらにもう一発。

[うおお!?]

今度は、タナベ機の肩ギリギリを掠める弾道。

[チハヤさんのお友達がエゥーゴの仲間になるわけ無い!きっと騙されてるの!]

さらに一発、二発。

いずれも直撃こそないが、確実にその近くを走り抜けていく。

「いい加減に……!」

チハヤとは別の二つのプレッシャーを押しのけ、ハルカはライフルを構えて発砲。

ミキが慌てて回避運動をとり、直撃から逃れる。

「チハヤちゃん!」

敵がひるんだのを確認して、チハヤへと突っ込んでいくハルカ。

「チハヤちゃん、どうしてティターンズなんかに!」

ライフルを腰に、チハヤ機を掴んでハルカが言った。

「ハルカこそ、なんでエゥーゴ……ジオンの残党なんかに!」

チハヤも武器を収め、ハルカ機を掴む。

「エゥーゴはジオンの残党なんかじゃない!ティターンズこそ、私兵軍団じゃない!」

「私は、私達は地球連邦軍の士官よ!?」

目に涙を浮かべ、チハヤが叫ぶ。

あんなに一緒に過ごしてきたのに。

チハヤの頭の中を、かつての日々が駆け巡る。

どうして、どうして分かってくれないの……?

「チハヤさん、泣いてるの?!」

ミキが、今度は射程距離に入ったハルカにしっかりと狙いを定める。

チハヤが近くに居るが、この距離なら外さない。

「でりゃあああああああっ!」

だが、マコトがそのライフルを蹴り飛ばした。

「邪魔しないで欲しいの!」

「そうはいかない!」

右手を振りかぶり、ミキに叩きつける。

ミキはそれを素早く下方に回避、ビームサーベルを引きぬいた。

「こいつッ!」

[チハヤちゃん、ヒビキちゃん、ミキちゃん、突入限界まであと3分!]

ユキホの言うとおり、あたりに摩擦で発生した炎が舞い始める。

「ミキ!」

「君の相手は俺だ!」

ヒビキがミキ援護に入ろうとするが、そのライフルをビームが貫いた。

「なんで前に出てくる!」

追加ブースターの途方もない出力で高速移動、素早く抜刀したサーベルを投げつける。

「ぐわあっ!」

ビームの刃がタナベ機のバリュートをかすめ、タナベ機は体勢を崩す。

「なんとおおおおおおおおおっ!」

さらにそこに、全推力でショルダーチャージを叩きつけるヒビキ。

二人ともにバリュート展開限界高度と速度を突破、摩擦で機体が火を吹き始めるが、ヒビキはタナベ機を踏み台にスラスター全開で上昇した。

「な……!」

「誰がお前なんかと一緒に燃え尽きてやるか!」

ヒビキの押しつけたベクトルに抵抗していたタナベ機の質量と、大気圏の短時間飛行も可能なクゥエルの追加ブースター。

ネモだけが地球側に吹っ飛ばされ、ヒビキは限界高度から離脱する。

「くそッ、バリュートは………!」

慌ててタナベはバリュートを展開しようとするが、さっきの損傷のせいで開かない。

「機体表面温度1000℃突破……嫌だ、助けてくれぇ!」

「タナベさん!」

ハルカが助けようとするが、届くはずもなく。

「うわぁぁぁぁぁ!」

大気摩擦で分解、燃え尽きるネモ。

「チハヤ、こっちもそろそろヤバいぞ!」

刻一刻と上がっていく機体表面の温度計を見て、ヒビキが言う。

「くっ……!」

だが、ハルカから手を離そうとしないチハヤ。

ハルカも、チハヤから離れる気配はない。

「何してるんだ!自分のクゥエルはもう推進剤が無い!」

「でも………」

ハルカを掴んだところで、次の言葉が出ない。

またいつ会えるか分からぬ戦場に戻らなくてはいけないのか。

……初めての、親友なのに!

「チハヤちゃん!」

その時、ユキホが二人の近くにコスモスのバルカンを放つ。

もちろん牽制、離れてくれればと思ってのことである。

目論見通りハルカは回避運動をとり、チハヤから離れた、が。

「邪魔をしないで!」

激昂したハルカが、コスモスにビームライフルを向ける。

大気圏突入と若干の大気圏内飛行能力しか持ち合わせていないコスモスに、回避が可能なはずもなく。

ハルカのリック・ディアスの腕が、ビームに貫かれた。

「チハヤちゃん?!」

驚いて振り向いたハルカの目に映ったのは、ビームライフルを構えるチハヤ機。

「あなたは……」

ビームライフルを腰に収納、両肩のビームサーベルを引きぬく。

「あなたはユキホにまで銃を向けるの!?」

「ユキホちゃん!?あれが!?」

ハルカが感覚を研ぎ澄ますが、感じるのは二丁拳銃のクゥエル、ミキからのプレッシャーだけ。

……この気に圧されて、ユキホちゃんが分からなかった……

「あなたは、もう私の知ってるハルカじゃない!」

サーベルを構え、ハルカに突進するチハヤ。

「待って!本当に分からなかった……」

弁解するハルカだったが、チハヤは耳を貸さない。

……ハルカはいつも天心万蘭、何があっても笑っていて、それが素敵で、でも、何かあっても、

「いつも、そうやってとぼけて!」

目に涙を浮かべ、チハヤは叫んだ。

「チハヤちゃんこそ、チハヤちゃんこそ、そうやっていつも意地を張って!勝手すぎるよ!」

今度はハルカの怒りが爆発する番だった。突進してくるチハヤをかわし、

「チハヤちゃんの、分からず屋!」

クゥエルに強烈な蹴りを食らわせる。

「な……」

追加ブースター大破、自分で行った加速も相まって、きりもみしながらバリュート展開限界高度と速度を突破。

「しまった!」

我に返ったハルカが叫ぶが、時すでに遅し。

チハヤは全ブースターをパージ、バリュートを展開しようとするが、

「突入角が……」

大気に弾かれるような角度ではないが、この角度で地表まで降下すればおそらくバリュートが持たない。

「くっ……このままでは!」

軌道変更をしようにも、ブースターはすでにない。

「チハヤちゃん!」

ユキホが加速、炎に包まれていくチハヤ機へと向かった。
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プロフィール

リンゴ・t

Author:リンゴ・t
アイマスが好きです、でもガンダムは人生です。

im@s架空戦記「宇宙駆ける蒼い鳥」好評連載中!

その他にも雑記、オリジナル小説上げるかも。

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