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林檎亭

(´・ω・`)やぁ。 ようこそ林檎亭へ。

ショートショートっぽい何か

2010.01.11

category : Blue Arcadia 設定

[オーディションを受ける方は、こちらで受け付けていまーす。]
まだオーディションまでかなり時間があるというのに、その声の元にはそれなりの行列が出来ていた。
正月休みが終わって初めての日曜日に、ご苦労なことだと私は思った。
かく言う私もこうして列に並び、受付を待っているのだが。それも、かなり前の方で。
数人か前の人が受付で自分の受験番号を言っているのを見て、自分も手元の紙で受験番号を確認する。
72。何かと因縁のある数字だけに、忘れようはない。
それにしても、ここに居る大勢のライバル達は何を考えてこのオーディションを受けるのだろうか。
……まさか、自分のような事情を抱えている人間はほとんど居ないだろう。
単なる憧れか、気まぐれか、そういえば、この前のオーディションでは自分を変えたいと言っていた人もいた気がする。
「はい、次の方!」
受付の人が、こちらに向かって手招きしている。
しまった、物思いにふけって列が進んでいるのに気づいていなかった。
「すいません!」
慌てて駆け寄り、頭を下げる。
「緊張してるねぇ、受験番号は?」
「72番、チハヤ・キサラギです。」
「ん、チハヤちゃんね。じゃあそこのステージの前に並んでる椅子に座って待ってくれる?」
「分かりました。」
係員の人が手で示す向こう、テレビ局の前に仮設されたステージと、その裏……ここはステージの裏なので、正面が正しいのだろうか、そこに椅子が並んでいた。
何が始まるのか、何のために並んでいるのかという、観光客達の好奇の視線を浴びながら、私は椅子に向かう。
座ってみると、冬の朝の冷気におしりが冷たい。だが、座っているうちにどうということはなくなるだろう。
「うひゃー、寒い寒い!」
その時、私の後ろに並んでいた子が、受付を終えたのかこちらに駆けてきた。
そして勢い良く椅子に座り、
「ぎゃあ冷たい!」
勢い良く立ち上がった。元気な子だ。
「ううー、えーと。」
しばらくの思案の後、彼女は手袋を外して椅子に置き、その上に座った。
隣に座った元気な彼女を、横目で見てみると、平凡な女の子だった。
私と年の頃は同じか、ぎゃあぎゃあと騒いでいたのを見ると少し下か。頭のリボン以外に化粧っ気も無く、服も平々凡々。
自分も人の事は言えたものではないが、それはこの喉だけで戦おうと思っているからであり。
この子も、何か見た目以外に何かを秘めているのだろうか。
「いやー、寒いですよねぇ本当に。」
突然、彼女が言った。
誰に言ったのか辺りを見渡すが、自分のもう片方の隣に座るオーディション受験生はその隣の子と話しているし、他には誰もいない。
「……私?」
「うん、そうだよ!」
満面の笑みでこちらを向き、彼女は言った。
「そうね、寒いわね。」
空を見上げても、灰色の雲が広がるばかり。これでは昼になっても気温が上がることはないだろう。
「私、ハルカ・アマミって言います。あなたは?」
「チハヤ、チハヤ・キサラギ。」
「そっか、よろしくお願いしますね、キサラギさん。」
そして訪れる沈黙。
ハルカと名乗った彼女はニコニコしているが、私の返答の仕方はやはりいけなかったのだろうか。
「えと、キサラギさんってお幾つですか?」
だが彼女はそんなこと機にする様子も無く、また話しかけてきた。
「14よ。」
「あれ、じゃあ私より一つ下かぁ。私なんかより全然大人っぽいのに。」
首を傾げる彼女。私は私を「大人っぽい」と言った彼女の胸元に行きそうになる視線を押し戻し、
「遅生まれなの。ハイスクールの1年生よ。」
「そうなんだ!じゃあ私と同級生だね!」
そう言って、彼女は急に手を握ってきた。
私は思わず顔をしかめる。
「あ、ごめんね、手、冷たかった?」
「いえ、大丈夫よ。」
そういう問題ではないだろう。
「どこから来たの?」
「ナカノよ。生まれも育ちもナカノなの。」
「へー、すごい!私はエレメンタリーからサイド4にいたの。」
何気ない私の言葉に、彼女は両手をあわせて身を乗り出してくる。
「別に凄くも無いわ。あなたは戦争が始まって疎開してきたの?」
「うん、コロニーに居ると危険だ、って。でも地球の家は近いから、もしかしたらまた会えるかも!」
……別に、会いたくない。
私は思わず黙り込んだ。
「チハヤちゃんは、なんでこのオーディションを受けようと思ったの?」
だが彼女は喋り続ける。明るいのか、遠慮が無いだけなのか。
「なぜ、って……」
早く親から独立したいから、なんて言ったら彼女はどう言うだろうか。
根掘り葉掘り聞いてくるのだろうか。意外と、そういう事を言ったら黙ってくれるのだろうか。
「私はね、歌が好きなの。」
だが彼女は、私の返事を待たずに喋りだした。
「私の歌で、たくさんの人が幸せになってくれれば良いなぁって。」
「そう……」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
他人本位な考え方。私にはきっと出来そうにない。
ニュータイプ。ジオンの創設者がそんなことを言っていた気がするが、結局その国が連邦に戦争を仕掛けてきたのだ。
このハルカという子の言葉も、どこまで純粋なものなのだろうか。
「私はね、」
自分の家庭環境を明かせば、彼女はどういう反応を返してくるのだろうか。
無神経な反応を見て、化けの皮をはがしてやろうかと思った。
我ながら意地が悪い。
だが、彼女はおもむろに立ち上がった。
「あれ……」
つられて顔をあげると、曇の朝にしては眩しい光が私の目を刺した。
雲の上を、何か光る物が動いている。
巨大なそれは、またたくまに私達の頭上を覆うまでに広がる。
いや違う、巨大なそれはもともと私達の頭上を占領するに足りる大きさだったのだ。
バキバキという、何かが砕けるような音。
瞬間、雲が晴れた。
燃えさかるコロニーの壁面。それが、ゆっくりと私達の頭上を通り抜けて行く。
「空が……落ちる……」
隣で彼女が、消え入るような声で言った。
そう、それはまるで空が落ちてくるよう。
かつてチャイナでは柱が空を支えているという迷信があったそうだが、目の前を占領する科学の粋にそんな喩えを持ち出すなど、ナンセンスの域だろう。
その時、炎に包まれた何かがコロニー本体とは別に落ちてくる。
ミラーの一部だろうか、それとも、一片が剥がれ落ちたのだろうか。
分からない。
ただ、それが地上からでも形の分かる大きさであり、まさにトウキョウの都心に落ちようとしていることは確かであり。


宇宙世紀0079年1月4日。
サイド2「ハッテ」の8バンチ・コロニー「アイランド・イフィッシュ」の第二ミラーの一片は、トウキョウ副都心を中心とする半径3キロを壊滅させた。
二次災害を含めた死傷者の数は不明。
この事件で戦災孤児になった子供のうち何人かが、地球連邦軍の兵士として前線に赴いたという情報があるが、定かではない。


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なげぇwwwwww

「Blue Arcadia」は、一応一年戦争開始から話は考えてありますよー、というお話。
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コメント

律子分が

たりない。

2010.01.12  ヴィットマン  編集

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プロフィール

リンゴ・t

Author:リンゴ・t
アイマスが好きです、でもガンダムは人生です。

im@s架空戦記「宇宙駆ける蒼い鳥」好評連載中!

その他にも雑記、オリジナル小説上げるかも。

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