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林檎亭

(´・ω・`)やぁ。 ようこそ林檎亭へ。

第二話-セカンドアルテミス(後編)-【宇宙駆ける蒼い鳥】

2009.11.21

category : 月光蝶である!

【ルナツー司令室】

「予定を3日も繰り上げての艦隊演習………随分と熱心ですね。」

横柄に書類をタカギに渡し、シジョウが言った。

豪華な机に座るタカギはそれを受け取り、改めて部屋を見渡した。

正面には自分と同じ豪奢な椅子に座るシジョウ、その後ろに控える、フェアリー小隊と言ったか、3人の若い女性。

そして出口近くと自分の両脇に二人ずつ、直属の部下。

4人の部下の真剣な眼差しを受けて、タカギは口を開いた。

「最近エゥーゴの動きが活発化していてね。加えてティターンズの拡大に伴う人事異動。艦隊の統率が取れなければ、ラグランジュ5方面の治安を誰が守るというんだね。」

固い顔で答えるタカギに、

「それだけではありませんわ。演習が終わるや否やの、メインゲート改修工事。」

艶妖な笑みを浮かべるシジョウ。

「それは予定されていたことだ。不自然ではあるまい。」

「推進剤不足の艦を抱えているのに、真っ先にプロペラント供給装置を取り外しても、ですか?」

「………」

「さらに管制室コンピュータをメンテナンスモードに……… 被弾痕が痛々しかった外壁換装から始めなされば、出航を押すことも出来ましたでしょうに。」

「判断ミスだったかもしれん……だが、過ぎたことだ。」

「この基地が、エゥーゴと内通している可能性は?」

シジョウの突然の一言に、場が騒然となる。

「言葉が過ぎやしないか、中佐。」

「可能性の一つとして申し上げたまでですわ。」

冷静なのは、タカギとシジョウのみ。

「地球連邦『宇宙』軍の要たるルナツー基地。宇宙主義のエゥーゴにも、元地球連邦の士官が大量にいるようですし。」

「この基地そのものが、エゥーゴに傾いている。そう言いたいのだな?」

若干の怒気を込め、タカギが言った。

流れる沈黙。

「ええ。」

大きく頷くシジョウ。

「貴様………!」

タカギではない、その右隣りにいた男が腕を振り上げ、シジョウに飛び掛かった。

「中佐!」

割って入るように飛び出るチハヤ、腕を掴み、合気の要領で押さえ付ける。

「離せ!」

「出来ません!」

「貴様、上官の命令が聞けんのか!」

男の襟に輝く、大佐の階級章。

逡巡するチハヤだったが、シジョウが立ち上がり

「そのまま。」

静かに言った。

頷き、固め技をやめないチハヤ。

「貴様も中佐だろう!これ以上無礼を働けば……」

「この………」

一歩前へ、シジョウは力強く男の眼前の床にその踵をたたき付ける。

「痴れ者!ティターンズと一般将校は違うと、知らぬとは言わせません!」

司令官室に響き渡る、凛とした、それでいて聞く者を恐怖させる声。

「…………」

その迫力に、男は目を見開いて固まる。

0083年の発足から始まるティターンズの絶対強権、ここに極まれり。

「……で、中佐はこの基地をどうするつもりだね?」

重苦しい沈黙の中、口を開いたのはタカギ。

「そうですね………」

勿体振るようにシジョウは目を閉じ、部屋を一周する。

そして、

「ティターンズの権限で、全ボイスレコーダーを調べさせましょうか?」

意地の悪い笑みを浮かべで言った。

「ボイスレコーダー……?それなら」

ホッとした表情で言うタカギに、

「ああそうそう、官制室の防犯カメラも。」

シジョウは追い撃ちをかける。

「……それは……」

「何か、問題でも?」

やましいところは無いのでしょう?と言わんばかりにタカギに迫る。

「……………冗談ですわ。」

長い沈黙の後、タカギの頬に手を当て、シジョウは言った。

「何………?」

シジョウの色仕掛けには眉一つ動かさず、タカギは怪訝な顔をする。

「ティターンズも、一枚岩ではないという事。」

ゆっくりと撫でるように手を離し、

「覚えておいてくださいな。」

シジョウは微笑んだ。




[ハルカ機、着艦します!]

コトリの声と共に、ハルカ機がモンデンキントのカタパルトデッキに着陸した。

[モンデンキント、最大戦速。艦隊への遅れを取り戻して。]

アズサが右手を前に突き出して言う。

巨大なノズルが火を噴き、加速するモンデンキント。

そして艦長席から腰を上げ、

[お疲れ様ー、ハルカちゃん。ネモ隊の人達は残念だったけど………ハルカちゃんは、大丈夫だった?]

いつもの間延びした声で言った。

「はい………」

リック・ディアスをハンガーに格納しながら、ハルカは呟いた。

[どうしたのー、ハルカちゃん。元気無いみたいだけど……]

首を傾げアズサが言うが、ハルカは応えない。

「ちょっと僕、様子見てきます!」

そう言って、マコトは艦橋を飛び出した。



「お疲れ、ハルカ!」

ハンガーに固定されたリック・ディアスから降りてくるハルカとすれ違いざま、リツコはその肩を叩いて言った。

「………」

だが、ハルカは応えない。

……1年戦争の頃のハルカに戻ったみたい………

リツコは思った。

あの頃は、敵を倒すのも味方がやられるのも堪えられない、と戦闘後はいつも黙りこくっていた。

だがそれも、4年前のデラーズ・フリート決起の頃から持ち前の前向きさで吹っ切っていたというのに。

「どないしたんや、ハルカは……」

リック・ディアスの整備に来たチカコも、眉をひそめて言った。

「さぁ………」

リツコも、ただただ首を傾げるだけ。

「ハルカ!」

その時、ハンガーに飛び込んでくる人影……マコト。

さすがにハルカもこれには立ち止まり、マコトの方を向く。

「どうしたんだよハルカ……みんな心配してるよ?」

「………ちゃんが………」

あごから滴る汗を拭おうともせず、ハルカは呟いた。

「え?」

「クゥエルの中に、チハヤちゃんが……居た……」

絞り出すように言うハルカ。

「………まさか。」

マコトは肩をすくめるが、

「本当……会話……したもの……」

「………」

マコトの知る限り、765隊でジオンに一番恨みを抱いていたのはチハヤ。

もしそれが、しばらく会わない内にエゥーゴ=スペースノイドという構図にすり替えられていたならば。

「私……チハヤちゃんに銃を向けた……」

力無くマコトにしがみつくハルカ。

「………大丈夫だよ。チハヤも分かってくれる。」

そんな確証はどこにもないが、マコトが言えるのはそれだけだった。

今は、チハヤを信じるしかない。

「でも……でも……」

慰めるように肩を撫でるマコトに、ハルカは首を振る。

「……チハヤを連れ戻そう。」

肩を握る手に力を込め、マコトは言った。

「本当のティターンズを知れば、きっと間違いに気付くさ。」



「チハヤ、本当にあれで良かったのか?」

ルナツー基地の4人部屋。風呂から帰ってきたヒビキが、ベッドに座るチハヤに言った。

二段ベッドが二つという部屋。ミキはすでに爆睡中、ユキホも、チハヤの上のベッドで寝息を立てている。

「……何が?」

「ルナツーのことだよ!もしかしたらエゥーゴと繋がってるかもしれないんだろ!?」

「シジョウ中佐の、ご判断よ。」

床を見つめ、チハヤは言った。

「そりゃあ、そうかもしれないけど………」

ミキの脱ぎ散らかした服をまたぎ、チハヤの隣に座るヒビキ。

「明日は出発よ。エゥーゴ艦隊が地球軌道上に集結しつつあるみたいだし、寝ておかないと。」

そう言って横になろうとするチハヤだったが、

「話は終わってないぞ!」

ヒビキがその肩を掴んだ。

「今日の戦闘、何があったんだ。」

「別に………」

「よく言うよ、戦闘中にあんなことして、終わってからも黙りっぱなしで!」

目を逸らすチハヤに、さらに迫るヒビキ。

だがチハヤは口を固く結び、目を合わせようとしない。

「……自分にも、言えないことなのか?」

ヒビキの声のトーンが下がる。

一瞬、彼女の顔を窺い見たチハヤの目に映ったのは、真剣で、今にも泣き出しそうな大きな瞳。

沈黙、

「………私の、親友がいたの。」

チハヤは再び目をそらし、言った。

「親友……?」

チハヤと同年代にして、あれほどの手練がそう何人もいるものなのか。ヒビキは首を傾げる。

「元地球連邦正規軍の、ね。」

「そうか、チハヤは小さい時から……」

コロニー落としによる東京の壊滅、家を失った子供達。

彼女らの一部が連邦に加わり、アフリカ戦線において目覚ましい戦果を挙げたことは、アムロ・レイの伝説に次いで連邦軍内で知らないものはいない。

「彼女……ハルカだって、ジオンに親族を殺されているはずなのに、何故ジオン残党になんかに……」

ヒビキの肩に顔をうずめるチハヤ。

「チハヤ………」

ヒビキは、その頭に手を置いた。

「チハヤちゃん………」

ベッドの上、起きていたユキホの呟きは、二人には聞こえない。
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プロフィール

リンゴ・t

Author:リンゴ・t
アイマスが好きです、でもガンダムは人生です。

im@s架空戦記「宇宙駆ける蒼い鳥」好評連載中!

その他にも雑記、オリジナル小説上げるかも。

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